FXや外貨預金、外貨建保険等、円以外の通貨で資産運用されている方はきっと気になるだろう為替の値動き。実は日々の生活にも大きく影響するもの。「円高・円安の意味は何となくわかるけれど、自身の生活にどう影響するかまでは考えたことがない」という方向けに、円高・円安それぞれのメリット・デメリットと注意点について解説します。
円高・円安とは:他の通貨に対する円の相対評価
円高・円安とは、他の通貨に対する円の相対的価値を示す表現。
以下の図の場合、「120円の方が80円よりも大きいのだから円高なのでは?」というのがよくある勘違いですが、$1の価値のものに対して¥80で購入することができるようになれば、「ドルに対して円の価値が上がった」と見て円高と判断し、逆に$1の価値のものに対して¥120円必要となれば、より多くの円が必要ということで「ドルに対して円の価値が下がった」と判断し円安と表現します。
「円」の大小ではなく「価値」の大小で判断するのがポイント!
円高・円安の一般的なメリット・デメリット
一般に、円高・円安時のメリット・デメリットは以下のように言われています。
円高 | 円安 | |
---|---|---|
貿易 | 輸入品に追い風、外国製品を安く購入可能 輸出品は値上がりし、日本製品の国際競争力低下 | 輸出品に追い風、営業利益の押し上げにも 輸入品は値上がり |
食料品価格 | 穀物や魚介類・肉類等の輸入品を安く買える | 穀物や魚介類・肉類等の輸入品の物価上昇 |
ガソリン価格 | 下落傾向 | 高騰傾向 |
外貨建て資産 (外貨預金・外貨建て保険等) | 外貨建て資産が目減りする | 外貨建て資産の増加 |
海外旅行 | 日本からの海外旅行客増加傾向 (アウトバウンド需要の拡大) | 日本への海外旅行客増加傾向 (インバウンド需要の拡大) |
たとえば貿易という1側面から見ても、円高の際には輸入品が追い風となり、円安の際には輸出品に追い風になる等、円高・円安どちらが良いとは一概には言えません。
しかし日本の場合、食料品やガソリン等の多くを輸入品に依存しているため、「輸入品価格の高騰=食料品や生活用品の価格高騰」に直結するといっても過言ではないのです。
上のグラフから、食料品や原料品、鉱物性燃料等は輸入品(緑)が輸出品(赤)を大きく上回っていることが読み取れますね。
日々のくらしのことだけを考えると、「円高で輸入品を安く購入できる方がお得?」とも捉えてしまいそうですが、日本は大手上場企業には輸出企業が多く、円安時には営業利益が増えやすいことから、その収益改善を見込んで株価が上昇するという副次的な効果もあります。
株価が上昇すれば、その株を保有している投資家の資産額は増加しますし、結果としてモノ・コトへの消費が進み、経済が回るという見方もできるのです。
円高・円安が持つ意味合いは変化する?表面的な数字だけではない背景を総合的に勘案することが重要
ただし、日本が置かれている状況を踏まえると、必ずしも前述のようなセオリー通りの動きが見込まれるわけではありません。
例えば、一般的には円安は輸出産業にプラスと考えられていますが、2008年頃のリーマンショック前後から、人件費や材料費、税金等の削減を目的とし、生産拠点を海外へシフトする動きが進んできました。その結果、円安にもかかわらず、日本の輸出数量はここ数年伸び悩んでいます。
また、新型コロナウイルスの影響により、海外旅行等、急を要しない移動は2022年4月現在もなお、厳しく制限されています。その結果、訪日客は大幅に減少し、インバウンド消費による経済効果は微々たるものになっています。
最近では、「良い円安、悪い円安」という表現をよく耳にします。その言葉の定義や解釈自体、まだまだ議論の余地があるように感じていますが、政治や経済がより複雑化する中で、為替差による影響は、メリット・デメリットのいずれか一方のみが顕著に現れることも。表面的な数字の変化だけでなく、その背景にある影響因子を含めて、数字の変遷の意味を読み解く必要があります。
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